忘れてはいけないことである。貧しい時に交際をしていた友人は、たとえ自分が金持ちになったり、偉くなっても決して忘れてはいけない。また糠みそくさい生活をさせてともに苦労し合ってきた古女房も金がたまったり、出世したりしても、表座敷から下におろさないで、いつまでも大事にしなければならない。
『糟糠の妻は堂より下さず』の意味である。漢詩の前段では『貧賤の交わりは和するるべからず』Bとも教えている。もっともなことである。
中国の後漢の光武帝の時代、寡婦となった姉を大司馬(当時の陸軍の大将軍)宋弘(そうこう)にめあわせようとしたときに、宋弘がこう発言をして謝辞した故事によるものである。この故事も時代を超越して通じる話である。
それにしても故事成語は勉強になるというかためになる。